米国の深刻な労働者不足


アメリカでは、トラック輸送、建設、小売り、飲食、原油掘削、ハイテク、製造、ホテルなどの宿泊業など様々な業種で労働者確保が困難になっているようです。
リーマンショク以降、1%~2%の低インフレ率のもと9年間景気拡大を続けてきたアメリカですが、ベビーブーマーが引退していく中で、労働力不足はさらに深刻になると予想されます。
5月の雇用統計にて発表された失業率は3.9%と17年来の低水準にあり、仕事が十分にあるとする人口の数は2001年以降で最高となっています。しかし、問題は単純ではありません。


米国国勢調査局によると、2030年までに財とサービスの需要の目安となる米国の人工は9%増加するのに対し、それを供給する労働年齢人口の増加はわずか3%にとどまるとみられています。
ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのリサーチ責任者であるトーマス・リー氏は、米国では2017年から2027年にかけて820万人の労働者が不足し、少なくとも過去50年間で最悪の水準となると予想しています。


多業種の米国企業が人材不足で労働者確保に躍起になっている中、これに加えトランプ政権の移民政策によってさらに労働人口拡大の可能性が閉ざされる可能性があります。
このままでは企業だけの問題だけではなく、米国のGDPにまで影響が及ぶとダンキン・ブランズ・グループのCEOナイジェル・トラビス氏は指摘しています。


トラック輸送業界では、既に5万1000人の運転手が不足しており、これによって輸送コストは全国的に急上昇しています。
全米住宅建設業者協会によると2011年は13%の建設会社が人件費と労働力の確保が主要な問題であるとしていましたが、2017年にはこの数字が82%となっています。











人材不足による賃金上昇


発表されている雇用統計を見ても、失業率の低下の割に賃金の上昇率は限定的で、労働力は依然として安価であるような印象を受けます。しかし、一部の大企業や分野ではすでに賃上げの動きが始まっており、ターゲットでは最低時給を昨秋に11ドルに引き上げたばかりですが、さらに9%引き上げて12ドルにすると発表しており、ヒューストンの大工職の平均報酬はわずか3年間で57%上昇しています。また、複数の都市や州では最低賃金を15ドルに引き上げる新たな法案も発効し始めています。


全体的には低下しているようにみえる賃金上昇率も中身をみてみると、管理職の上昇率が鈍化したのに対して労働人口の80%を占める非管理職と生産労働者の賃金上昇は加速しています。


これらの賃金上昇の影響は、これから発表される雇用統計にも徐々に数字として表れてくると管理人は予想しています。
米国債利回りとほぼ連動した動きを続け、現在小幅に下げているドルですが、雇用統計をはじめ様々な指標として賃金上昇の傾向がはっきりと示せればドルは再び強さを取り戻し上昇をはじめるのではないかと考えています。


今後の米国産業の課題は失業率低下と賃金上昇よりも移民受け入れや10代の労働力を積極的に取り入れるなどの労働人口の拡大となってくるでしょう。